| Cycle to the Sun 2006 レポート 2006年8月25日,仙台を出発.マウイ島に着くまで,トラブルらしいトラブル はなかった.あえて挙げるならば,ホノルル空港の入国審査で,係官に帽子と 眼鏡をとれと言われた挙げ句,しげしげとパスポートの写真と見比べられたこ とだろうか.たしかに,眼鏡・帽子・髭の変装3点セットがそろっていては仕 方ないかも知れない. 着いたその日,そして翌日とガイド付きでマウイ島を軽く走る.人口11万の小 さな島のせいか,交通量もそれほど多くはなく,適宜バイクレーンも設置され ているため,思ったより走りやすい.ドライバーは十分車間を取ってよけてく れるし,追い抜くスペースがなければ待ってくれる.クラクションをならした り,幅寄せしてくるような(日本で普通に見られる)マナーの悪い車は皆無だっ た.仙台の街中を走る方がよほど危険だ.でも右側通行にはなかなか慣れず, 最初のうちはカーブで対向車が左車線から現れる度にいちいちビクッとしてい た. 8月27日,Cycle to the Sunのレース当日は午前4時に起床した.スタート地点 への集合が6時なので,ホテルを5時に出る予定.シャワーを浴びているときに 朝食を用意していなかったことに気づく.前日に買出しをしておくのを忘れて いたのだ.あわてて,ホテル向かいの24時間営業のガソリンスタンドへ走る. 併設されている店舗は電気がついていて,レジには従業員がいるのに,扉が開 かない.最初は焦ってよくわからなかったのだが,どうやら夜間は窓口越しに 店員に注文を出して買い物をすることになっているようだ.なんとかサンド ウィッチとスポーツドリンクを手に入れて,無事に朝食をとることができた. 5時過ぎに,同じツアーの参加者である,YさんKさんとともにホテルを出発. 自走で,スタート地点である10キロほど離れた町Paiaへ.まだ日が昇り始めた ところで暗く,ライトを用意していなかったので,慎重に走る.5時50分に Paiaに到着.受付で手続きをして,脚に番号を書いてもらう.次第に他の参加 者も到着して,賑やかになってきた.今回のツアーのガイドであり,自らも出 走するアロハバイクトリップの河村さんとサポートの奥さん,家族と一緒に来 たYbさんも到着.日本人の参加者は5 名となった. 普段のヒルクライムのときはそれなりにウォーミングアップをすることにして いる.しかし,自走してきたこともあるし,これから走る距離を考えるとあま り念入りにする必要もないだろうと,適当にその辺を軽く走るだけにした.他 の参加者は準備に余念がない.レース前の落ち着かない雰囲気というのは,日 本と同じだなと思う. Cycle to the Sunは,ハワイのマウイ島で行われるヒルクライムレースだ.コー スは,海抜0mからハレアカラ山頂海抜3,000mまで57kmをかけてのぼる.日本 のおもだったヒルクライムレースは,乗鞍が標高差1360m/距離20.8km、美ヶ 原が標高差1270m/距離21.6km、鳥海が標高差1100m/距離28kmとなっているの と比較すると,倍以上の規模であることがわかる.しかも,ごくわずかな下り・ 平坦区間を除けばひたすらのぼりが続く.毎年優勝者のタイムは3時間をきる が,もちろんそんなに速く走れるはずはない.初めてのコースでもあるし,4 時間を切れば目標達成とする.日本で行われるヒルクライムレースではおよそ 90分程度をみておけばよい.ボトル1本に水を入れ,万一のための補給食にカー ボショッツ一袋を用意するのがいつものパターン.ペース配分もおおよそ判断 できる.しかし,4時間のヒルクライムは体験したことがない.どんなことが 自分の身におきるのか,不安と期待がないまぜの状態でレースに臨んだ.こん な気持ちは,はじめてヒルクライムレースに出場したとき以来だ. 想定どおりにいくかどうかは未知数ながら,前年の参加者のレポートや河村さ んのアドバイスを参考に,おおまかな計画をたてた.途中のエイドステーショ ンで水またはスポーツドリンクをボトルに入れて渡してくれるので,自分で持っ ていくボトルは一本のみとし,水を入れる.補給は,カーボショッツ二袋分を ジェルフラスクに入れて,水で割ったものを持つ.さらに,クリフバーを一袋. 天候が悪化する恐れがあったので,夏用インナーと半袖ジャージを基本としつ つ,寒さ対策としてアームウォーマとベストをジャージのポケットに入れてお くことにした.自転車は,コンパクトドライブを装備したものを用意.リアス プロケットは12-25がいれてある.普段のレースでは取り外す予備チューブや携 帯ポンプもアクシデントに備えて装着しておく.ペース配分は,よくわからな い.前半は抑え目に様子をみて,あとはいけるところまでいくということにす る. 7時になって,参加者138人(ソロ131名,チーム7名)がスタートする.遠慮して 後ろのほうに並んでいたので,道路に出た時点ですでにかなり前方で先頭集団 がハイスピードで飛ばしているのが目に入る.こちらはまずは適当な集団につ いていくことにした.Paia からMakawaoまでの約10kmは,前々日に試走をして あったので,ゆるい上りが続くことがわかっている.スピードはだいたい 17,8kphくらい.後ろから追い越していくる人がいると,適宜乗り換えて少し ずつ前の集団に移っていく.Makawaoには,勾配が10%くらいのセクションが数 百mほどあるが,それ以外は5%未満だろう.Olinda RdからHanamu Rdへまがる と,ときおり下りが交じるセクションが数kmほど続く.集団もそれなりにスピー ドがあがる.途中,集団前方から"Caaaaat!"の叫び.見ると猫が道路を横切っ ていた.さいわい何事もなく通過する. やがてHaleakara Hwyに入る.スタートからおよそ18kmにある最初のエイドス テーションをすぎると,勾配が若干きつくなってきた.集団もすっかりばらけ てしまうが,それでも何人かは視界に入っている.ここから40kmまでの区間は, 勾配も5%を越える箇所も多く,それまでの疲れもあってペースはかなり落ちて いた.15kphは維持できていなかったろう.二つ目のエイドステーションが標 高1200m/距離25km地点に,三つ目のエイドステーションが標高1500m/距離31km 地点にある.まわりの風景もそれまでの林や牧場などの郊外の景色から,山岳 地帯という印象にかわる.当日は曇りがちな天候だったが,ところによっては 視界が大きく開け,マウイ島の海岸線がぐるりとみわたせた. このレースは,コースをクローズしていない.したがって,自転車が走ってい る横を普通に車が走り抜けていく.コースがオープンなので,応援の人が車か ら声をかけてくれる.車で先行して,適当な地点で応援してから,また車で先 行するという人も多い.Ybさんの家族には途中4・5回お会いした.観客やエイ ドステーションのスタッフからは,通りすがりに"Good looking!","Good job","Go! Go!"といった声援をもらう.余裕のあるうちは手を振ったりして 応えていたが,そのうち苦しくなって何もできなくなった. 40kmをすぎたところに,第4エイドステーションがある.標高2000m.ゲートを 通り,ハレアカラ国立公園内に入る.すでに2時間以上走り続けているが,ま だ2/3だ.これからさらに1000m標高を稼がないといけない.いまさらながらこ のヒルクライムのすごさを実感した.これだけ走っても,まだ20kmも残ってい る.2000mのぼって,あと1000mも登りがあるかと思うと,その非現実間におも わず笑ってしまった.横で見ていた人がいたら,さぞかし気味が悪かったろう. 前の人を目標に登っているうちに,追い付いて4人のパックになった.一人は 女性だ.勾配が緩くなったこともあり,先頭交代をしながらハイペースですす む.こんなペースで最後まで持つかな,と思っていたら,案の定,左脚が攣っ た.ペースを落しつつ無理やり脚をまわしているうちに,ボトルを落してしまっ た.拾うために自転車を降りた瞬間,脚と腰にダメージがたまっていること驚 く.普通に歩けない.よたよたと中腰でボトルを取って,なんとか自転車によ じ登る.足をついてしまったことを残念に思っているうちに,左足以外に体の 調子がおかしいことに気づく.両手が軽くしびれて感覚がなくなっており,唇 が冷たい.寒さのせいか?いや,これはハンガーノックだ.そういえば,定期 的にカーボショッツを口にしてきてものの,2時間半で2袋分しか口にしてない. 幸い,第5エイドステーション(46km地点)にさしかかったので,ジェルをくれ と叫ぶと,2つ手渡してくれた.すぐに,口にいれる.甘い.ガツンと来る甘 さだ.平常時には正気の沙汰とは思えない味だが,この時は文字通り目が覚め た.ハンマージェルというブランドだったのだが,いい得て妙だと後で納得し た. 少し元気を回復して走り出すのも束の間,先ほどの左足の痙攣が右側にも移っ てきた.ペダルを踏む度に太股に痛みが走る.攣った部分を無理やり伸しても, すぐに攣る.これはどうにもならないとあきらめて,いったん自転車を降り, 回復を待つことにした.残りは7〜8km.あともう少しなのにと,自分の鍛練不 足を悔やみながら,路肩に自転車をとめて降りた瞬間,本格的に足が攣り,転 がるようにして横になる.攣った部位を無理やり伸すと,また別の箇所が攣る. しばらくは何をしても,そこら中が攣りまくって,七転八倒するほかなかった. 3〜4分じっとしていると,なんとか走り出せそうな状態にまでおさまった.な るべく負荷をかけないよう,軽いギアで走り出す.幸い勾配は緩い.それでも, 少しでもペダルを踏み込むと,脚が痙攣する.やがて事前に聞いていた通り, ゴール前の勾配がきついセクションが現れた.自分ではゴールまであと500m 以上あるだろうと思っていたら,観客(おそらくすでにゴールした選手)が, 「ここをのぼれば,もうゴールだ.最後だ.全力を出せ.おまえのすべてを出 せ!」と叫んでいる."Your everything! Everything!"の気合いに押されて, ペースアップ.脚がひくついていたが,構うものか.そのままなんとかゴール に飛込んだ. タイムは3:39:58.目標はクリアしたものの,脚が攣ったり,ハンガーノック になったりと,反省点は多い.しかし,それもコースのタフさの証明と思うこ とにした.ビーチのすぐそばのスタート地点から,月面を思わせる荒涼とした 山頂のゴール地点に至る終わりの見えない登りは,やはり格別だ.坂好き(坂 馬鹿とも言う)なら一度は経験して損はないだろう. 今回もたくさんの人にお世話になった. 自転車の整備や輪行のアドバイスをしていただいたベルエキップ店長遠藤さん, ツアーの企画と現地のガイドをしていただいたアロハバイクトリップの河村さん夫妻, Cycle to the Sunの主催者やスタッフ(ほぼボランティアらしい)のみなさん, ツアーをご一緒させて頂いたYさん,Kさん,Ybさん. どうもありがとうございました. 2006.9.4 K. Suzuki |
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