ヨーロッパレースの移動

ヨーロッパは陸続きでどこに行くにも車で行く。
選手は長距離は飛行機で移動するが、それもある程度のチームでTT3などは来るまで移動する場合が多い。大体600km位は車で移動してもスピードが速いヨーロッパならさほど気にならない。

メカニック、マッサーは車で器材と一緒に移動するので基本的に100%車の移動になる。
スイスのチームはトレーラー一台と3t車一台の2台体制だったが3tトラックは意外と良く走り160kmの巡航ができたため長距離の移動には重宝した。トレーラーは80kmで走るので所要時間は半分になる。

スイスからフランスに入る(出る)には国境を通るのだが大体ジュネーブ側は何も問題が起きず顔見知りの職員も出来て通りやすかった。南のイタリアの国境がなかなか曲者で必ず止められる。中を見せろとか
何を積んでいるかとか、車にはプロフェッショナルサイクリング‐ムと明記してるのにだ。
大体こういう場合は「これからレースしにイタリアに行く」というと決まって”スーブニールは無いのか?”とくるのが相場だ、つまり何かくれということで、大体はレーサーキャップ、ポスターなどで、それを差し出すと急にニコニコして送り出してくれる。いかにもイタリアらしいが、杓子定規でうるさい国よりも合理的な気もする。その点ドイツは固かった!ダメなものは絶対ダメらしい。お堅いお国柄がでて興味深い。

国境付近には両替があり、手持ちのお金を両替できる。一番両替が安いのはスイスの銀行か空港の両替所で、あらかじめ両替しておくと良い。一般道の場合は近くにカフェなどもあるが、なんとなく怪しい雰囲気のところが多く、あまりそういったところでは休まなかった。まだ自分がいた頃はユーロが無くイタリアの両替はリラの紙幣がごっそり出来るので最初の頃は数える単位がたいへんだった。
高速道路の料金所ではどの国でも”こんにちは(ボンジュール)”で、お金を渡すとサヨナラ(オーボワー)と会話するが、たまには自転車が好きな人もいて、どこのレースか聞かれたりして自転車文化の違いを感じる。またこのときに挨拶を交わすのも長時間一人で運転してたりすると息抜きになる良い習慣だと思う。

移動は基本的にお昼頃ホテルに着くように移動する。
移動後荷物を運んでトラック(カミオン)を設定できるようにだ。

一日中走る時は途中で食事するのだが日本のように高速上のレストランがどこにでもあるという訳でもないので、高速移動の時はある程度決めて止まるようにする。大体同じレストランに他のチームも止まるのでここである程度再会することになる。フランスはレストラン以外の食事は貧相でサンドイッチもあまり美味しい記憶が無かった。

イタリアはフランスに比べて軽い食事が出来るところが多く、パニーニや、フォカチャなどもあるので、買った後すぐ車で移動することが出来た。それにしてもイタリアの高速にある”オトグリル”はどこも美味しかった記憶がある。
一般道では国道沿いなら小さいながらレストランがあり、何度か同じルートを通るときにトラックが止まっているところを調べると良い。一度ボルドのポムロール地区(ワインが有名)の国道沿いで昼の定食を頼んだらワインが飲み放題(地酒なのでポムロール)でデザートもついて1000円くらいだった。車なのであまり飲めなかったのが残念だった。

スペインに行くと高速沿い(西は高速が無料区間が多い)にカフェがあり、ホテルも兼用したホテルレストランになっている。昼時はどこも混んでいるが、味付けは日本人感覚に近く、タコの煮付けや、モツ煮のようなものもあり、昼なのに居酒屋気分になる。長距離ドライバーは食事&昼寝でくつろいでいるようだ。

食べ物はその地方の文化を象徴していて面白い。

ヨーロッパの移動は平均速度160km!計算でいくと丁度良い。日本と違って高速道路の指導が良いのか、追い越し車線をゆっくり走る車はいないので速い車は安全に高速で走ることができる。
イタリアやドイツのアウトバーンではかなり速い速度で後から迫ってくるので左ミラーを良く見ないとあっという間に後から迫ってくる。
特にイタリアはスピードを落とさずに来るので追突されそうな気分になる。が、スレスレで横を50km以上の速度差で抜けていくのでどうも先天的に速度感に対するものが違うのではないかと思ったことがある。
でも彼等は減速していない。イタリアでは追い越し車線は速い人が最優先なのだとつくづく実感する。ここまではっきりしていると追い越す時は素早く、済んだら走行車線に戻ることが常識となる。良い習慣と思う。

一日で1000kmの移動ははざらで、お金の無いチームは夜を徹して6000kmとかを移動する。しかも選手も一緒だ。日本に伝わる”プロ”はまるでUSポスタルやクイックステップのような超一流だけだが、現実には8割くらいのチームは選手、監督、マッサー、メカニック全部一緒に車で移動しているのが現状だ。スタッフだけでは疲れるので時々は選手も運転して母国に帰ることになる。いつも車で移動して、家に帰って地図を広げてみると、その移動距離に驚く。
1日で地球の丸いと判るくらいの部分を走っていたことがある。

もしかして車でヨーロッパからロシアを抜けて香港までいけるのではないかと地図を見たことがあった。

移動はレースの初まりでもある。